賃貸住宅に入居する場合、考えるべきは家賃だけではありません。家賃の他に、初期費用というものが発生します。この初期費用が入居の1つのハードルとなっていることも多いでしょう。ここではそんな初期費用のなかに含まれている、敷金について紹介します。

◆そもそも敷金とは?

それではまず、そもそも敷金というのがどのようなものなのかについて紹介します。多くの場合初期費用として2ヶ月分ほどが敷金として請求される形となっていますが、これは何のために支払っているお金なのでしょうか。

敷金は、この時点で効果を発揮しているお金ではありません。敷金が効果を発揮することになるのは、その物件から退去する際です。物件から退去する際、借り主はその物件についての「原状回復義務」を負うことになっています。これは、借りる前の状態に部屋を戻さなければならないという義務だと大雑把に理解して頂けると良いでしょう。 具体的には違っている部分もあるため、その点については後述します。

敷金はこの「原状回復」が借り主自身で行われていない場合、大家側が部屋の修復を行うために利用される「預け金」です。そう、重要なのはこの「預け金」であるという部分です。敷金は支払っているわけではなく、あくまでも預けているだけのものであるため、自分自身で原状回復義務を履行しているのであれば、退去時に返還を要求することができます。

◆原状回復の条件

それでは、より具体的に「原状回復」がどのような範囲のものであるのかを紹介します。原状回復についての規定は平成10年及び16年に出されたガイドラインによって示されており、「貸借人の居住、使用により発生した建物の価値の減少のうち、故意、過失、善管注意義務違反によって発生したものを回復する義務」としています。つまり「故意」「過失」「善管注意義務違反」ではない損傷に関しては、原状回復義務の範疇には含まれません。

それでは、実際の例を示しつつ、原状回復が必要であるかどうかについて紹介します。まずは「経年劣化」に関する部分についてです。例えば壁紙に陽が当たっている部分の色が変わってしまう、というようなものがこれにあたります。これは故意でも過失でも善管注意義務違反でもありません。つまり、原状回復の対象とはならないため、敷金からの拠出の必要がありません。

それでは「ゴミの処理が遅れたことで汚れが染みてしまった」という場合についてはどうでしょうか。こちらについては、善管注意義務違反となります。善管注意義務というのは、借り主がその住宅を極力損傷しないように、綺麗に使うことを定めている義務です。ゴミの処理が遅れてしまう、というようなことはこの義務に違反していると考えられるでしょう。

では、「煙草による汚れ」はどうでしょうか。喫煙をしている場合、壁紙が黄ばんでしまうようなことがよく有ります。これについても、実は故意・過失・善管注意義務違反のいずれにも当たらないため、原状回復の必要がありません。 ただし、入居規定において禁煙としている住宅の場合についてはこの限りではなく、原状回復の必要が発生することになります。

◆黙っていると返還されない?

実際に賃貸住宅を利用したことがある人の中には、敷金が返還された覚えがない、という方も多いのではないでしょうか。敷金については知らなければ返還がされない場合も多いため、しっかりと知っておき、退去の際に返還されるかどうかを確認しておく必要があるでしょう。

参考までに、関西地方に於いては、「敷引き」という慣習が存在しています。これは、敷金の内の一部を返還しないお金として設定するという仕組みです。事前に確認をしておかなければ大きなトラブルに繋がる可能性があるため、契約書の内容について確認し、疑問点があれば契約前に必ず確認して解消しておくようにしましょう。

弊社もしっかりと説明させていただきますが、少しでも気になる部分などございましたら何でもお気軽にご相談ください。