リフォームやリノベーションを進めようとした際に、施工業者から「アスベスト調査が必要です」と案内されて戸惑う方も少なくありません。アスベスト(石綿)は吸い込むことで健康被害を引き起こす恐れがある物質であり、特に2006年以前に建てられた住宅や建物には使用されている可能性があります。そのため、解体や改修といった工事を行う前には、法律に基づいた調査が義務化されています。

本記事では、2023年10月から義務付けられたアスベスト調査について、調査の対象となる工事の種類や費用の目安、万が一アスベストが検出された場合の対応方法、そして利用できる補助制度までを整理して解説します。

近年では、島内でも築年数の経過した戸建住宅を購入してリフォームする動きが増えています。安心・安全な住まいづくりのために、工事に入る前に必要な知識をしっかり身につけておきましょう。

アスベスト(石綿)とは?基礎から押さえておきたいポイント

アスベスト(石綿)は、天然の鉱物繊維の一種で、髪の毛の約5000分の1という極めて細い繊維構造を持っています。耐熱性や防音性、摩耗への強さに優れて加工もしやすいことから、かつては建築資材として非常に重宝されてきました。その利便性の高さから「奇跡の鉱物」と呼ばれ、1960年代の高度経済成長期には国内の多くの住宅や建物に使用されています。

しかし、このアスベストは空気中に飛散しやすく、吸い込むと肺に蓄積してしまうという重大な欠点があります。しかも症状がすぐに現れるのではなく、20〜40年という長い潜伏期間を経て肺がんや中皮腫といった深刻な病気を引き起こすことが明らかになりました。この危険性が判明したことで規制は年々強化され、2006年には含有率0.1%を超える建材の製造や使用が全面的に禁止されています。

以前は断熱材や吸音材、耐火処理を施す塗材、外壁材、浴室の壁材など、住宅のあらゆる箇所に用いられていました。したがって2006年以前に建てられた建物には、まだアスベストを含む建材が残っている可能性が高く、リフォームや解体工事の際には専門的な調査を行うことが欠かせません。

アスベストが含まれている可能性のある建材

リフォームや解体工事の対象となる建物の中には、過去にアスベストを使用した建材が残っているケースがあります。代表的なものを整理すると、次のようなものが挙げられます。

内装材(壁・天井まわり)
・一部のせっこうボード
・ビニール製の床タイル
・吸音材や断熱材

外装材(外壁・屋根まわり)
・外壁仕上げとして使われた吹付塗材
・スレート材(屋根材・外壁材)
・波型スレート板

鉄骨造住宅の耐火被覆材
鉄骨造の建物では、柱や梁を火災から守るために耐火被覆材が使われます。過去にはこの素材にアスベストが含まれていた例もあり、改修時には十分な注意が求められます。

水回りや住宅設備
・ユニットバスの壁材や浴槽部分
・給水管・排水管の接続部に使用されたパッキン材

リフォーム工事前に必要な「アスベスト事前調査」

2023年10月からは、建物を解体したり大規模な改修を行ったりする際に、必ず資格を持った専門家によるアスベスト(石綿)調査を実施することが法律で義務付けられました。対象となるのは築年数や工事規模を問わず、基本的にすべての解体・改修工事です。 アスベストは2006年に使用が全面禁止されるまで、外壁材や天井材、床材など幅広い建材に混ぜ込まれてきた歴史があります。そのため、築年数の古い住宅や建物をリフォームする際には、とりわけ注意が必要です。

アスベスト事前調査の対象となる工事

アスベストの有無を確認する調査は、建物の解体や改修工事を行う際には規模を問わず必ず実施する必要があります。その中でも、以下に該当する工事については、調査結果を労働基準監督署へ届け出る義務があります。

解体工事:対象となる建物の床面積が 80㎡以上 の場合

改修工事:工事の請負金額が 税込100万円以上 の場合

重要なのは、アスベストが見つからなかったケースでも「調査を行い、その結果を報告すること」が法律で定められている点です。もし報告を怠った場合、30万円以下の罰則 が科せられる可能性があります。

築年数とアスベスト含有の可能性

アスベストの使用が全面的に禁止されたのは2006年のことです。それ以前に建てられた建物には、ごく少量であってもアスベストを含む建材が使われている可能性があります。

築40年以上の建物:高い確率でアスベストが含まれている可能性がある

1995年~2006年竣工の建物:リスクは低下しているが、完全にゼロではない

2006年以降の建物:原則としてアスベストは使用されていない

なお、過去に大規模なリフォームや改修を行っている場合は、既にアスベストの除去や封じ込め工事が実施されているケースも多く、その分リスクは軽減されていると考えられます。リフォームや解体を進める前には、まず建物の築年数を確認し、必要に応じて事前調査を行うことが、健康被害を防ぎ安全に工事を進めるための第一歩となります。

アスベスト事前調査の流れ(書面・目視・分析の3ステップ)

リフォームや解体工事を始める前には、専門資格を持つ「建築物石綿含有建材調査者」による事前調査が必要です。この調査は大きく3つの段階に分かれており、リスクの有無に応じて順を追って進められます。

① 書面調査(図面や施工記録の確認)

まずは建築時の設計図や施工資料を確認し、使われている建材にアスベストが含まれる可能性を確認します。建築時期や材料の品番を照合し、国のデータベースと比較して判断します。なお、2006年9月1日以降に着工された建物であれば、図面などで証明できれば現地調査や分析は不要となります。

② 目視調査(現地での確認)

書面だけで判定できない場合は、現場に足を運んで建材を直接確認します。メーカー名や商品名、ロット番号などを調べ、データベースと突き合わせるほか、施工状況や下地の状態もチェックします。この段階でアスベストの有無が判明すれば調査は終了です。

③ 分析調査(サンプル採取と成分分析)

目視でも判断できないときは、建材の一部を採取し、専門の検査機関で成分を分析します。これによりアスベストが含まれているか、また含有率がどの程度かを正確に把握することができます。

不安を解消し、安全で快適な住まいを手に入れるには

アスベストの処理は、安全性や環境への配慮を徹底しながら慎重に行う必要があります。費用面で不安を感じる方も多いですが、補助制度を活用できる場合もあり、リフォームや解体を計画しているのであれば早めに相談することが大切です。沖縄県でも「アスベスト改修事業」といった取り組みが進められており、適切な支援を受けられる可能性があります。

リフォームに伴うアスベスト調査はすでに義務化されており、有資格者による正しい調査と処理を行うことで、安全な住環境を確保することができます。アスベストと聞くと不安を抱く方も少なくありませんが、正しい方法で対応すればリスクを抑え、安心して生活を続けることが可能です。過度に恐れるのではなく、専門家と連携しながら冷静に進めることが重要です。

当社では、経験豊富な専門家をご紹介し、調査から処理までをしっかりサポートします。疑問や不安がある方も、まずはお気軽にご相談ください。安全で快適な住まいを実現するためのお手伝いをいたします。